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第4話 「秘密の花園」と「赤毛のアン」

2000年05月18日

私は女性誌の編集にたずさわって30年にもなるけれど、その間に仕事で印象的な2冊の少女小説と出会うことになった。どちらも、その文学性の高さゆえか、子どもはもちろん、十分に大人の琴線にふれる物語になっている。

時代は巡る。そして読者の方々も、執筆陣も、あの頃よりきっと少しだけ年齢が上がっているのだろうけれど、感動の振幅は変わっていないような気がするからだ。

あの頃というのは、かつて私が「私の部屋」という雑誌の編集長をしていた昔のこと(10年間、編集長をやった)。企画を考えていて、そうだ、『赤毛のアン』特集をやろうと思いたった。主人公のアンが、息をのむほど美しいりんごの花のトンネルをくぐって、緑の切妻屋根の家に到着するところから始まる有名な物語。ここには、外国のカントリースタイルの素朴な生活のすべてがあった。パッチワークもジャム作りも果実酒も、四季折々の行事を待ちこがれる純朴な暮らしのリズムも、そして、誰をも浄化してくれる輝くような自然があった。この本は、手作りを好み、田園生活に憧れる女性達の間でバイブルとなっていた。舞台になったカナダのプリンセスエドワード島は、だから、これからも、聖地でありつづけるにちがいない。

『赤毛のアン』がカントリーライフのバイブルであるとすれば、『秘密の花園』はガーデン愛好家の心の書、という存在になり得るのではないだろうか。小さな頃にこの本を読んだことのある人は多いと思う。でも庭や自然の草花に心ひかれる年齢になってから、もしまだ読んでいなければ、ぜひ、再読をおすすめする。全く新たな、素晴らしい表現の数々を発見する自分に感激するだろう。

○庭の静けさ、ひそやかさ
○早春から初夏にかけて、芽吹きから開花の喜び
○土の匂い、日ざしのぬくもり
○イングリッシュ・ガーデンの情緒あれこれ

著者バーネットがどんなに庭好きかがよくわかるし、その筆の力はガーデン愛好家を深くうならせる。ビズNO.6(5月16日発売・夏号)の巻頭特集『秘密の花園』の秘密もぜひご覧ください。

◎編集現場で、リサーチを始めて中止したことがあります。それは映画の『秘密の花園』のプロデュースが、あの『地獄の黙示録』のフランシス・コッポラのようだったこと。というのは、同姓同名の別人かどうか、同じコッポラなら、彼のどんな思いが『秘密の花園』を作る気にさせたのか、直接インタビューしたかったのです。コッポラ氏のホームページからは、このことは探れなかった。どなたか、BISES編集部に情報をください。後日談にでも仕上げて、誌上でご報告します。

◎特集の中で、BISESのガーデンフォトグラファー、アンドリュー・ローソンさんが著者バーネットの住んだ家を訪ねています。現在そこは、N.G.S. (イギリス最大の個人庭公開組織。、チャリティーを目的にする。今年は3500軒以上が参加)に所属していて、庭の一般公開をしています。BISES誌上でお伝えしています。ぜひご覧ください。

執筆者プロフィール

ガーデニング誌『BISES』の元編集長。創刊から休刊までの146冊、25年間務めました。1997年流行語大賞トップ10に選ばれた「ガーデニング」は、私が全国に広めた言葉です。これはGARDENINGをカタカナにしたもので、造語ではありません。今では日本語として立派に定着しましたね。