今年に入ってからスタートしたビズの英国・ザ・ナショナルトラストのシリーズでは、イギリス在住のイワモトヨウジさんのガンバリで、日本人の庶民感覚からはおよそ遠い、かつての城主様たちの暮らしがわかる一風変わった世界が広がっています。暖炉に煙突状の筒をつっこんで暖をとる珍妙なバスタブが登場したり、キッチンに鎮座する巨大な食器あたため器の解説があったりと、昔の人々の生活の知恵が生き生きと伝わってきます。
我らがイワモトヨウジさんは、レディング大学の田園生活博物館で研究者生活を送りながら、日本への窓口として、この組織の保存する膨大な財産(プロパティ)に精通している方です。BISESの連載も8年目を迎えた2001年のシリーズをどうしたものかと、昨年末、深夜の国際電話打ち合わせに、相当な時間をかけました。城のゴージャスなインテリアも、整形式庭園もある程度見てしまえば、興味は他に移るというもの。それじゃあ、想像の手がかかりすらなかった城主様たちの生活に光を当ててみようじゃないかと相成ったわけ。
結果、人件費と懐具合のバランスに苦慮する中小企業の社長族同様に、英国文化的上流階級の当主の悩みが、一見優雅な舞台の裏にかい間見える連載となったわけです。
それにしても、英国・ザ・ナショナルトラストという組織はすごいです。自分たちの作り上げてきた歴史的建造物から、景観まで、国内のありとあらゆるものを後世に伝えていこうというのですから。そしてスタッフが皆、若い。さぞ、いかめしい老紳士達の集まりではと思いきや、英国本部で出会った役職付きの中堅どころは30代か、40代でした。フレンドリーでエネルギッシュで、とてもいい感じ。英国の伝統は若い世代が守っている!!
第11話 「英国何でも相談人、現わる」
2001年08月10日