ガーデニング誌ビズ HOME > 執筆者・八木 波奈子のブログ > 2018年10月16日 日々を美しく。理想を生きた手づくりの暮らし。
——スウェーデンの画家、カール・ラーション展——

日々を美しく。理想を生きた手づくりの暮らし。
——スウェーデンの画家、カール・ラーション展——

2018年10月16日

「カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」展が損保ジャパン日本興亜美術館で開かれています。

1994年、BISESが現地取材をして編集した大特集「画家カール・ラーションの描いた“理想的”な我が家」からすでに24年もの時が過ぎましたが、今もなお、会場に展開されるアーツ&クラフツ・スピリットは胸を熱くするものがありました。ダーラナ地方のスンドボーン村にあるラーション一家の家はリノベーションを続けて、家具からテキスタイル、壁画、洋服、食器に至るまですべて妻カーリンとの共同作業で唯一無二の空間に仕上げられています。今回の展覧会は画業中心の展示ですが、住宅内部の写真もあり、雰囲気を楽しめる工夫がされています。

カール・ラーションは1899年に自宅と家族、豊かな田園生活を描いた画集「わたしの家」を出版して一躍脚光をあびます。この絵本はやがてスウェーデンのインテリアデザインの規範になっていきました。会場のショーケースには、この「わたしの家」も展示されています。

※以下、画像写真の無断転載を禁じます。

リッラ・ヒュットネースの庭に集うラーション一家

リッラ・ヒュットネースの庭に集うラーション一家
1906-07 年頃 © Carl Larsson-gården

リッラ・ヒュットネース(ラーションの家の愛称)の庭で5人の子供とその友人、モデルと共に。

画集『わたしの家』

画集『わたしの家』 1899年刊
カール・ラーション・ゴーデン © Carl Larsson-gården

カール・ラーションを一躍、国民画家となる道へと歩ませた画集「わたしの家」。

祖父

祖父 1909年 油彩
カール・ラーション・ゴーデン ©Carl Larsson-gården

妻カーリンは英国のコテージガーデンに習い、庭に様々な植物を混植した。こうしたガーデニングスタイルは、この時代最も洗練された新しい庭づくり手法だった。描かれた花はデイジー、ヒマワリ、ワスレナグサなど。

カール・ラーション《アザレアの花》

カール・ラーション《アザレアの花》
1906年 水彩 ティールスカ・ギャラリー
© The Thiel Gallery / Thielska Galleriet, Stockholm
Photo: The Thiel Gallery / Tord Lund

窓辺に立つカーリン。手前に大きくアザレアを配したジャポニズムの影響を感じさせる構図。左手の織り機には、カーリンが制作中のタペストリが描かれている。

カール・ラーション《史跡巡りをする夫妻》

カール・ラーション《史跡巡りをする夫妻》
1906年 水彩 カール・ラーション・ゴーデン © Carl Larsson-gården

食堂のステンドグラスのデザイン原画。カールは家のあちこちに家族の肖像を描いた。

リッラ・ヒュットネース(現:カール・ラーション・ゴーデン)の玄関

リッラ・ヒュットネース(現:カール・ラーション・ゴーデン)の玄関

自宅の玄関。現在、ここはカール・ラーション記念館として一般公開され、年間6万人が訪れている。赤い壁はスウェーデンの木造住宅の特徴で、木材を保護するために酸化鉄の塗料が塗られている。

リッラ・ヒュットネース(現・カール・ラーション・ゴーデン)の食堂

リッラ・ヒュットネース(現・カール・ラーション・ゴーデン)の食堂
© Carl Larsson-gården

この食堂は夫妻が最初に改装した場所で、赤と緑はダーラナ地方の伝統色であると同時に装飾芸術運動、アーツ&クラフツの先駆けであるウィリアム・モリスのレッドハウスの影響を受けている。

カーリンがデザインしたクッションとタペストリ

カーリンがデザインしたクッションとタペストリ 
カール・ラーション・ゴーデン © Carl Larsson-gården

青いクッションはヒマワリを、背もたれのテキスタイルは地、水、火、風の四大要素を表している。どちらもカーリンのデザイン&制作。座面のカバーはダーラナ地方の伝統模様。

カーリンがデザインした扉のカーテン《愛の薔薇》

カーリンがデザインした扉のカーテン《愛の薔薇》
カール・ラーション・ゴーデン © Carl Larsson-gården

生活アーティストであるカーリン・ラーションはファブリックがもたらすインテリアへの効用を熟知していた。ベッドルームの間仕切りもカーリンのデザイン&制作。このタペストリの周囲には、夫カールが“カーリンへ”の献辞と共に夏の花を描いている。

インフォメーション
「カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」展
会期:2018年12月24日まで、月曜休館
開館時間:10:00~18:00まで(ただし10月26日、12月18 ~ 23日は19:00)
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
〒160-8338 東京都新宿区新宿1-26-1
損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
電話:03-5777-8600
損保ジャパン日本興亜美術館:http://www.sjnk-museum.org/

「カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」展
公式ガイドブック。

東京美術 定価¥2,000+税

執筆者プロフィール

ガーデニング誌『BISES』の元編集長。創刊から休刊までの146冊、25年間務めました。1997年流行語大賞トップ10に選ばれた「ガーデニング」は、私が全国に広めた言葉です。これはGARDENINGをカタカナにしたもので、造語ではありません。今では日本語として立派に定着しましたね。