巣立ちの森の13年

2017年07月24日

 
(撮影:三浦明) 

今年の5月、バラの季節に訪れた神奈川県の笠井雅子さんから、たくさんの写真とともに13年間続いた物語が届きました。笠井さんのお子さんが入学した小学校には、校内に小さな森があり、そこは自然の恵みが豊かで、子供達の大好きな遊び場でした。夏は木蔭が気持ちよく、春は桜も見事でした。この森の一角には動物小屋があり、アヒル、ウサギ、ニワトリが沢山飼われてました。




こちらの小学校では、動物の飼育は子供達に任されていたようで、子供達は飼育を通して命の大切さを学ぶことが出来ました。ただ、餌やりや水やり、掃除、鍵かけ、などなど、幼い子供だけで世話をすることには限界がありました。鳥インフルエンザ問題が発生した頃からは子供たちによる飼育が制限され、動物たちは変わりゆく時代に合わせて生きていかなければなりませんでした。「動物たちを支えたい」という思いから、雅子さんは小学校に了承を頂き、ボランティアとして動物の面倒を見始めました。最後の一羽が天国に旅立つまでの13年間、毎日、学校に掃除と世話に通いました。



この小学校は近隣の住宅化がすすみ生徒の数が増え続けています。不足分の教室を増築するため、森は平成21年に3分の2が失われ、今年1月、残っていた森もほとんどなくなりました。
樹齢25年を超える記念樹の桜の大木が、 ある日消えて無くなった風景は切なく寂しい。


緑豊かだった森を思い出すたびに、「失わずに済む良い方法がなかったのかな」と考え、「命や自然を温かく見守る目と、支えてくれる沢山の優しい手が、どんな時代にも絶えることなく側にいてくれたらいいな」と、心から願い、過ごしているそうです。

執筆者プロフィール

ガーデニング誌『BISES』の元編集長。創刊から休刊までの146冊、25年間務めました。1997年流行語大賞トップ10に選ばれた「ガーデニング」は、私が全国に広めた言葉です。これはGARDENINGをカタカナにしたもので、造語ではありません。今では日本語として立派に定着しましたね。